IBS患者でおこっている大腸の変形
IBS(過敏性腸症候群)は、内視鏡検査などで腸粘膜などに異常な所見がないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘などの症状を繰り返す病気です。しかし、近年IBSの患者さんにおいて、大腸の形が変形しているということが分かってきました。
大腸は「?」のような形をしていて、自分から見て右下あたりから上へ向かい、お腹の真ん中を通り、そして左下の肛門へとつながっています。
私たちが食事をすると、だいたい2時間くらいで胃や小腸で消化吸収しきれなかったものが大腸へ流れていきます。
腸内フローラと呼ばれる無数の腸内細菌がいるのは大腸で、この腸内細菌たちが小腸で吸収されなかった食物繊維などの消化残物を分解してくれています。大腸に対して小腸にはほとんど細菌がいません。
正常な胃腸のはたらきでは、胃→小腸→大腸と一方にしか消化物は流れず、小腸←大腸といった矢印が逆になることはありません。小腸と大腸の間に「弁」という扉のようなものがあり、それが大腸の内容物が小腸へ逆流しないようにしてくれているからです。
小腸の出口(回腸)側と大腸の入り口(盲腸)側の間にあるため、この弁は「回盲弁」と呼ばれています。
しかし、IBSの患者さんの85%が小腸で細菌が増えてしまうSIBO(小腸内細菌増殖症)へ悪化するという報告もあり、これは回盲弁のはたらきが弱くなり、大腸から小腸へ腸内細菌が逆流してしまっているからではないかと言われています。
また、IBSの患者さんの大腸には変形が見られ、回盲弁のある辺り(お腹の右下)が太くなり、逆に肛門に近づく左側では細く狭まっていることが分かりました(Farmer, Adam D.,et al. Caecal pH is a biomarker of excessive colonic fermentation. World J Gastroenterol. 2014 May 7;20(17):5000-7 )。
大腸の酸性化が便秘をおこす
IBSの患者さんで見られた大腸の変形は、お腹の右下(盲腸あたり)が太く膨らんでいるもので、この膨らみは「腸内ガス」で、それにより腸の粘膜が引き伸ばされ、回盲弁も引き伸ばされ、小腸へ細菌が入りやすくなってしまう、これがSIBOへ悪化しやすい原因だと考えられます。
そして、左側(肛門へつながる側)が細く狭まってしまうことで、便の排出が困難となり、刺激性の便秘薬などを使っても便秘が改善しない状態になっていると考えられます。
では、なぜ右側(大腸の入り口側)だけ膨らみ、左側が狭くなってしまっているのか、それが「大腸の酸性化」にあることが報告されています。
大腸の右側(盲腸)のpH(ペーハー)と、大腸の動き(排便を促すぜん動運動)には相関関係があることが示され、大腸内のpHが下がり酸性になるほど、動きも悪くなることが分かりました。
つまり大腸の動きが悪くなると、内容物を押し出せないため、入り口付近に腸内細菌のエサがたまり、それにより細菌からガスがたくさん出て盲腸側が膨らみ、内容物の少ない左側では腸が委縮してしまう負の連鎖が起こっていると考えられます。
ここで、便秘が続いているからと、刺激性の便秘薬を使い続けると、メラノーシスといって大腸が黒くなり、さらに動きが悪くなるという悪循環に陥るため、薬を気軽に使うのは非常に危険です。
大腸が酸性化する原因
大腸が酸性に傾いてしまうのは、酸性食品の食べすぎではありません。腸内細菌の出す「酪酸・酢酸・プロピオン酸」といった酸性物質が大腸内で増えているからです。
大腸の腸内細菌は、食物繊維などをエサに発酵をし、同時にガスや短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸など)を排出します。腸内細菌の数が増えていくほど、ガスや短鎖脂肪酸が増えお腹が張って苦しくなったり、腸内のpHが酸性に傾いてしまいます。
食物繊維が大腸を壊す
腸内細菌が増える最大の原因は「食物繊維の摂りすぎ」にあります。食物繊維以外にも、小麦、玉ねぎ、にんにく、バナナ、桃や柿などには「フラクタン」という腸内細菌の好物が多く含まれ、ごぼうや菊芋などには「イヌリン」、サトイモや寒天などには「ガラクタン」、豆類には「ラフィノース」といった腸内細菌の好物が含まれています。
食物繊維の多く含まれる野菜であったり雑穀類、小麦、豆類などを常食していると、腸内細菌がどんどん増え、お腹がガスでパンパンになったり、ぜん動などが弱まり便秘になったりと、大腸の機能が低下してしまうのです。
そして、大腸がガスで膨れたり機能が悪くなると、自律神経の一種である副交感神経(特に迷走神経)が緊張し、日中の眠気やだるさ、低血圧、血管が細くなり頭痛や首痛、めまい、不眠、アレルギーやアトピーの悪化などの症状があらわれるようになります。
副交感神経は体の休息時にはたらく神経なので、「自律神経の乱れだからリラックスしよう」といくら心がけても症状は改善されません。むしろ、体がずっとリラックスしすぎているため、活動すべきタイミングで力が入らずだるさなどを感じているのです。
*迷走神経とは*
迷走(めいそう)神経とは、自律神経の一つ「副交感神経」の一種で、胃・小腸・大腸をはじめ、肺や心臓、肝臓やすい臓といった内臓のはたらきを調節しています。
その大部分は、からだを休息(リラックス)状態にするためにはたらきますが、胃・小腸・大腸・肝臓・すい臓などの食べ物の消化にかかわる器官に対しては、その機能を高めるようはたらきます。
そのため、迷走神経をゆるめることは、胃腸機能を改善するために非常に重要なことのです。
改善の秘訣はディフェンシブフードの食事療法とVR法にあり
では、機能が悪くなってしまった大腸のはたらきを改善するためにはどうすればよいか。第一に食物繊維の摂取を控えるということが大事です。
増えすぎている細菌がこれ以上増えないように細菌のエサになるようなものをこれ以上与えない、ということが重要です。さらに、増えすぎてしまっている腸内細菌の数を減らすため、当院では細菌を減らす作用のある「オレガノ」というハーブを配合したサプリメントや、殺菌効果の高い「カテキン」を含むサプリメントを開発しています。
腸内細菌が減ることで腸内の酸性度も改善され、腸の動きが戻ってくるのです。
また、腸内細菌のエサになるような食品を避けると同時に、腸の機能を回復させるために必要な栄養を摂るということも大事になります。腸の機能を悪くする食品を避け、腸の粘膜を傷つけず、栄養の吸収能力を高める食材を積極的に摂るという食事療法を、当院では「ディフェンシブフードの食事療法」と呼んで指導しています。
迷走神経弛緩法(VR法)により自律神経症状を改善
また、上記でも述べたようにだるさや不眠といった日常生活に影響を与える症状の改善には、迷走神経の緊張をゆるめるオイルマッサージ整体(迷走神経弛緩法=VR法)が適しています。
VR法では、首周辺(胸鎖乳突筋周辺)の筋肉の強張りを解消することで迷走神経の緊張をゆるめることができます。
また、お腹のマッサージによりお腹の張りの解消もできます。
首やお腹は血管や臓器の集まるデリケートな部位なので、力をかけてしまうと損傷するリスクがありますが、当院でのマッサージでは「合気の極意」より極めて弱い力で筋肉をゆるめることができるため、そういったリスクがほとんどありません。
今回の記事は、YouTubeでも解説していますので、よろしければご視聴ください。
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